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円の持つ神秘の力


DVD「妖婆 死棺の呪い」(C)RUSCICO/IVC  例えば、映画「妖婆・死棺の呪い」の悪魔払いのシーンを思い出してみることにしましょう。
 この映画は、中世ウクラナの農村を舞台にしています。神学生のホマーは、夏休みに田舎に帰ろうとするその道中で妖怪に魅入られてしまいます。そして、死んだ地主の娘の魂を救うためにと三日三晩の祈祷を命じられることになります。
 ここで、「円」を使った悪魔払いの様子を見ることができます。ホマーは、聖書を置く書見台と自分の周りに直径2メートルほどの円を床にチョークで描きます。この中には、どんな魔物も入ってこれないのです。ホマーはこの円の中で一心不乱に祈祷を捧げ続けます。
 魔女となって蘇った地主の娘は、棺おけごとこの円の中に突入しようとしますが、円はまるで厚いガラスに覆われているかのように棺おけを跳ね飛ばしてしまいます。
 「妖婆・死棺の呪い」は、ソビエト製カルト・ムービーとして数十年にわたって語り継がれてきた傑作ですので、是非、映画をご覧いただくとして、このように「円」は邪悪なものを断ち切る力があるものとして、洋の東西を問わず古来より考えられてきたことが、お分かりいただけたことでしょう…

 そして、アンドレイ・タルコフスキー監督の「ストーカー」では、「円」は「円筒」となって登場します。それは、水が滝のように流れる「乾燥室」という皮肉な名で呼ばれるトンネルや、「肉引き機」と呼ばれる恐ろしいパイプだったりします。
 人間の願いを叶えてくれるという禁断の場所「ゾーン」。その中心部に向かう三人の男たちは、ナットを結んだリボンを放り投げては、目には見えぬ道を進んで行きます。三者三様の想いを秘め、二度と同じルートは辿れないという、その行く手にトンネルやパイプがあるのです。
 トンネルを通り抜け、パイプをくぐり抜けるたびに、男たちは欲望をむき出しにし、本心をあらわにして行きます。「円筒」が人間の外套を剥ぎ取り、単純にしてしまうかのようです。ここでは「円」は純粋化を促すもののようです。
 東洋思想に共感を示し、宗教的とも思えるタルコフスキーの哲学は「円」を浄化のシンボルと見たのでしょうか。魂の救済を訴え続けながら、病魔に没したタルコフスキーが欲したものは「円」の力だったのかもしれません。
 冥界のタルコフスキー監督に「茅の輪」を捧げたいと思います。
 
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